Research

Developmental influences on social brain: 

どのような社会環境が、動物の「社会脳」を育てるのか。

(selected publications)

(mouse)

Takefumi Kikusui, Yukino Ishio, Miho Nagasawa, Jeffrey Mogil, Kazutaka MogiEarly weaning impairs a social contagion of pain-related stretching behavior in mice. Developmental Psychobiology, 2016 Dec;58(8):1101-1107

Kazutaka Mogi, Yuiko Ishida, Miho Nagasawa, Takefumi Kikusui. Early weaning impairs fear extinction and decreases brain-derived neurotrophic factor expression in the prefrontal cortex of adult male C57BL/6 mice. Developmental Psychobiology,2016  58, 1034-1042, 

Mogi, M., Ooyama, R., Nagasawa, M., Kikusui, T. Effects of neonatal oxytocin manipulation on development of social behaviors in mice.Physiol. Behav. 133, 68–75, 2014

Mogi, Kazutaka; Shimokawa, Yuko; Nagasawa, Miho; Kikusui, Takefumi, Effects of sex and rearing environment on imipramine response in mice. Psychopharmacology, 224, Issue 1 (2012), Page 201-208

Miho Nagasawa, Shota Okabe, Kazutaka Mogi, Takefumi Kikusui, Oxytocin and mutual communication in mother-infant bonding. Frontiers in Human Neuroscience  2012; 6: 31. 

Shota Okabe, Miho Nagasawa, Kazutaka Mogi, Takefumi Kikusui. The importance of mother-infant communication for social bond formation in mammals. Anim Sci J. 2012 Jun;83(6):446-52

Mogi K., Nagasawa M., Kikusui T. Developmental Consequences and Biological Significance of Mother-infant Bonding.  Prog Neuropsychopharmacol Biol Psych2010 Sep 9.  


Kikusui T, Mori Y. Behavioural and neurochemical consequences of early weaning in rodents J Neuroendocrinol. 2009 Mar;21(4):427-31.


Kikusui, T., Ichikawa, S., Mori, Y., Maternal deprivation by early weaning decreases hippocampal BDNF and neurogenesis in mice.  Psychoneuronedocrinology 2009, 34, 762-772


Ono, M., Kikusui T., Mori, Y. Ichikawa, M. Murofushi, K. Early weaning induces anxiety and precocious myelination in the anterior part of the basolateral amygdala of male Balb/c mice.  Neuroscience 28, 156, 1103-1110 (2008)

(Dogs)

Nagasawa MShibata YYonezawa AMorita TKanai MMogi KKikusui T.  The behavioral and endocrinological development of stress response in dogs. Developmental Psychobiology.2013 Sep 6. doi: 10.1002/dev.21141.


Social cognitive function:

動物の “こころ”と未知なる能力の解明をめざす

Empathetic systems in animals:

お互いの気持の理解の原点を探して。

Developmental influences on social brain: 

どのような社会環境が、動物の「社会脳」を育てるのか。


動物にもヒトと同じようにさまざまな個性が存在します。三つ子の魂、百までと 言われるように、幼少期の社会環境、特に母子関係のよしあしが動物の行動パターン形成に与える影響は大変大きなものです。たとえば幼少期に母親から早期に 離された動物やストレスを受けた動物では、成長後も不安行動や攻撃性が増加することが知られています。伴侶動物学研究室ではマウスをモデル動物として用 い、このような社会性の発達に関するメカニズムの解明、また幼少期の母子関係に障害が起こってしまった場合の治療方法開発の研究を行います。特に中枢オキシトシン神経系の発達における幼少期環境の役割について、遺伝子改変マウスやsiRNAなどの分子生物学的手法を駆使して、その神経メカニズムの解明に挑みます。現在の主なテーマは以下の通りです。


  • マウス早期離乳による脳内記銘メカニズムの解明
  • マウス早期離乳による不安増強の改善手法の確立
  • 母子環境と脳内オキシトシン神経系の発達
  • マウス母子間の社会的緩衝作用に関する因子同定とメカニズムの解明
  • 社会経験による「育児脳」形成の神経メカニズム解明
  • イヌの母子間コミュニケーションが神経行動内分泌発達に及ぼす影響の解析
  • 老齢性認知障害の改善手法の確立
  • ハダカデバネズミの真性社会性の行動発現におけるホルモンの効果


母と仔の絆 -早期離乳モデルを用いてー

子は多くのことを親から学び取 る。それは単に社会的学習だけでなく,一般的な行動様式,さらにはストレス反応などのような生理的機能も親から伝授して受け継ぐものである。特記すべきこ とは,不安傾向,ストレス反応,さらに母性行動や性選択性など生命活動に大きく関わる行動パターンの形成は遺伝よりも環境の影響が大きいことが,げっ歯類 をはじめ,ヒトやサルでも示されてきた。それほどまでに幼少期の環境は大事なものといえよう。

私たちの研究室では,不安ストレス反応を中心に,幼少期環境がどれだけ成長後の行動パターンの形成に影響を与えるかを調べてきた。げっ歯類をモデルとして用い,親から普通より1週間早く離乳された動物では,不安傾向の上昇,ストレス反応性の亢進が認められた。

1)早期離乳による神経生理学的変化の解析: 早期離乳による不安傾 向やストレス反応性の亢進は,生涯にわたって観察されることより,脳内の神経機構形成に大きな影響を与えていると思われる。現在,ストレス反応や不安行動 などに関連の深い分子にターゲットを絞って,それらの発現量,発現調節メカニズムの解析を進めている。特にストレス内分泌反応を制御する海馬グルココルチ コイド受容体発現量,セロトニン1Aおよび1B受容体発現量,ミエリン形成量,BDNF,シナプス関連分子を解析し、早期離乳による永続的ストレス記憶が 脳のどこにどのように記銘されているのかを明らかにしたい。

2)母性バイオシグナルの同定: 我々の研究室では母性由来のバイオシグナルの有無が仔の成長後の不安行動にどれほどの影響を与えるかを調べている。生後2週間から母親から離して育てた仔 ラットおよび仔マウスでは永続的な不安行動の上昇と攻撃行動の変容が認められている。そこで現在は、早期離乳モデルを用い,離乳された仔ラットが母性由来 のどのようなバイオシグナルを受容することで不安行動が改善するのか、あるいはそのようなシグナルは他の母親や動物からのシグナルでも十分であるかどうか を突き止める。

3)腸内細菌、栄養素によるストレス応答性の制御: 近年、「脳腸相関」と呼ばれるように、中枢神経系の機能と腸管の機能の強いつながりが見出されてきた。脳と消化器の機能的関連のことです。臨床的にはストレスによって発生もしくは増悪する消化器症状,ならびに消化器症状によって情動が影響される現象をいう。基礎的には,脳機能と消化器の機能のあらゆる関係が脳-腸相関に包含される。最近,基礎的にも臨床的にも脳-腸相関のもつ重要性が認識されはじめている。

4)盲導犬の育成課程における母子間相互作用と行動内分泌学的発達に関する研究:上述の通り、哺乳類の母子間には非常に強い共通性が認められる。このことから、犬においても、出生後から離乳に至るまでの間の母子間コミュニケーションが仔犬の社会性や社会行動、ストレス応答性などを変容させる可能性がある。本研究室では、日本盲導犬協会との包括的研究協定のもと、イヌの発達段階に伴う母仔の行動・神経内分泌変化を評価し、胎生期を含んだ母仔関係と成犬時の新奇刺激及び環境への適応性の関係を明らかにする研究を開始した。これによって、イヌの母仔関係の適切な管理基準を呈示し、仔イヌの外部環境に対する頑強性や適応性を発達させ、我が国でもっとも多く見られる不安や過剰咆哮、攻撃などのイヌの問題行動の減少、さらに盲導犬などの使役犬における育成管理の向上に大きく貢献することが期待される。







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