Publications‎ > ‎

Publication2012-13

[2008-2009]  [2010-2011]  [2012-2013 ] [2014- ]


Kato T, Miyata K, Sonobe M, Yamashita S, Tamano M, Miura K, Kanai Y, Miyamoto S, Sakuma T, Yamamoto T, Inui M, Kikusui T, Asahara H, Takada S. Production of Sry knockout mouse using TALEN via oocyte injection. Scientific Reports.3, Article number: 3136 doi:10.1038/srep03136



Yoshida S, Esposito G, Ohnishi R, Tsuneoka Y, Okabe S, Kikusui T, Kato T, Kuroda KO. Transport Response is a filial-specific behavioral response to maternal carrying in C57BL/6 mice. Front Zool. 2013 Aug 14;10(1):50. doi: 10.1186/1742-9994-10-50.

.


Nagasawa M, Kawai E, Mogi K, Kikusui T. Dogs show left facial lateralization upon reunion with their owners. Behav Processes. 2013 56(4):726-33.


情動表出の側性化はヒトを含めた多くの動物で見いだされている現象である。イヌでも情動を喚起する呈示刺激に対する尾の振り方、頭部の振り向き方などに側性化が見られることが示されている。一方、イヌは進化の過程でヒトに類似した社会的認知能力を獲得したため、現在のようなヒト−イヌ間という異種間の共生、さらには絆の形成が可能になったと考えられている。そこで本研究では、飼い主の呈示によってイヌの表情の側性化がみられるかどうかを検証した。イヌにとって新奇の場所である実験室において、飼い主、見知らぬ人、非社会的好刺激、非社会的嫌悪刺激を呈示し、イヌの耳と眉の動きの加速度の左右差を解析した。その結果、非社会的好刺激では顕著な反応が見られなかったのに対し、飼い主呈示条件で右眉に対して左眉が大きく動く傾向が認められた。これらのことから、イヌにとって社会的特異的存在である飼い主の存在がイヌの表情表出に側性化を生じさせたことが示唆された。


Nagasawa MShibata YYonezawa AMorita TKanai MMogi KKikusui T.  The behavioral and endocrinological development of stress response in dogs. Developmental Psychobiology.56(4):726-33. 2013



Kikusui T. Analysis of Male Aggressive and Sexual Behavior in Mice. Pheromone Signaling in Methods in Molecular Biology Volume 1068, 2013, pp 307-318



Okabe S, Kitano K, Nagasawa M, Mogi K, Kikusui T.Testosterone inhibits facilitating effects of parenting experience on parental behavior and the oxytocin neural system in mice. Physiol Behav. 2013 Jun 13;118:159-64.


マウスの養育行動は仔マウスへの暴露経験や内分泌ホルモンにより制御されている。しかし、経験の獲得により活性化する養育行動に内分泌ホルモンがどのように関与するのかは定かではなかった。そこで本研究では、経験により活性化する養育行動に対する性腺由来ホルモンの影響を調査した。成熟した雌雄マウスに対し、仔マウスを繰り返し暴露すると、メスでは仔マウスを巣に戻す「巣戻し行動」が亢進したが、オスでは亢進が起きなかった。しかし、去勢処置したオスではメス同様の巣戻し行動の亢進が認められ、メスに雄性ホルモンであるテストステロンを投与するとオス同様、巣戻し行動の亢進が阻害された。このことから、仔マウスへの暴露経験による巣戻し行動の亢進はテストステロンにより抑制されていることが示唆された。さらに、巣戻し行動のような養育行動に大きく関与することが知られているペプチドホルモン、オキシトシンがこの現象にも関与するのか調査した。視床下部室傍核におけるオキシトシン産出細胞の数を解析した結果、オスやテストステロン処置されたメスのオキシトシン産出細胞の数は、メスや去勢処置したオスよりも少なくなっていることが明らかとなった。これらの結果から経験依存的に活性化する養育行動はオキシトシン神経系を介した性腺由来ホルモン、とくにテストステロンにより制御されていることが示唆された。


Okabe S, Nagasawa M, Kihara T, Kato M, Harada T, Koshida N, Mogi K, Kikusui T. Pup odor and ultrasonic vocalizations synergistically stimulate maternal attention in mice. Behav Neurosci. 2013 Jun;127(3):432-8.


マウスの幼若個体は巣や母親から離れると超音波領域の音声(pup USVs)を発することが知られている。本研究ではC57BL/6マウス(B6)の母マウスを用い、pup USVsへの反応性に対する仔マウス嗅覚刺激の影響を調査した。pup USVs, 仔マウス嗅覚刺激それぞれを単独で提示しても、母マウスは接近行動を示さなかったが、pup USVsと仔マウス嗅覚刺激を同時に提示すると、これに対して高い接近行動を示した。次に、このような複数刺激を提示された際に活性化する脳領域の検出を試みた。その結果、母性行動や情動行動の制御中枢である視床下部内側視索前野(MPOA)や扁桃体基底核(BLA)、扁桃体中心核(CeA)に高い活性が認められた。このことから、B6の母マウスはpup USVsと仔マウス嗅覚刺激が同時に提示された際、高い反応性を示し、このような複数刺激の統合処理にMPOA, BLA, CeAが関与することが示唆された。


Kikusui TShimokawa YKanbara NNagasawa MMogi K. Organizational effects of estrogen on male-type vulnerability to early weaning. Horm Behav. 2013 Jun;64(1):37-43.


本研究室では、早期離乳マウスの永続的な不安行動とストレス亢進状態を見出してきた。興味深いことに、この早期離乳の影響はオスで顕著に観察され、雌雄で異なる作用を持つ。今回、このオスの早期離乳の脆弱性がどこから生じるのかを検討した。3週齢以降に去勢した場合やメスにテストステロンを処置しても、早期離乳の影響には変化がなく、3週齢以降の性ステロイドホルモンの影響はなかった。2週齢で去勢するとオスで早期離乳の影響が消失し、テストステロンあるいはエストロゲンの処置で回復した。このことから、親から離された2週齢の時点で、ストレス経験と性ステロイドホルモンの相互的作用が不安を増加させることが示された。また2週齢時に早期離乳したメスにテストステロンを処置しても早期離乳の影響が観察されなかったことから、すでに形成されたオス型の脳にストレス経験が刷り込まれるメカニズムの存在が示唆された。オス型の脳の形成は周産期のテストステロンによるものである。そこで出生直後に去勢をした倍の影響を調べたが、すでにオスでは雄型の脳が形成され、早期離乳の影響をうけることが示された。胎生期のテストステロンの作用を調べることを目的とし、妊娠メスにテストステロンを処置し、メスの脳を雄型に変更した。するとメスでも早期離乳の影響が観察された。このことから、早期離乳のオスの脆弱性は胎生期のテストステロン分泌による脳の雄型化が基盤となり、離乳時にエストロゲンと相互作用することで、永続的な不安上昇が起こることが示された。


Esposito G, Yoshida S, Ohnishi R, Tsuneoka Y, Rostagno Mdel C, Yokota S, Okabe S, Kamiya K, Hoshino M, Shimizu M, Venuti P, Kikusui T, Kato T, Kuroda KO.Infant Calming Responses during Maternal Carrying in Humans and Mice. Curr Biol. 2013 May 6;23(9):739-45.


ライオン、リスなどヒト以外の哺乳類では、母親が仔を口にくわえて運ぶと、仔は、丸くなって運ばれやすい姿勢をとります。これを「輸送反応」と呼んでいますが、これらの子どものおとなしくなる反応についてはあまり科学的な研究がされておらず、その意義や反応を示すときの神経メカニズムも不明でした。理研BSIの黒田先生らとの共同研究で、母マウスが仔マウスを運ぶ動作を真似て、離乳前の仔マウスの首の後ろの皮膚をつまみあげると、隔離時の子マウス超音波発声が止み、リラックスして自発的な動きと心拍数が低下し、体を丸めることがわかりました。さらに、体を丸めて運ばれやすい姿勢をとるには運動や姿勢の制御を司る小脳皮質が必要なこと、おとなしくなる反応には首の後ろの皮膚の触覚と、体が持ち上げられ運ばれているという感覚の両方が重要であることが分かりました。また、この仔マウスの「輸送反応」を阻害したところ、母親が仔マウスを運ぶのにかかる時間が増加することも分かりました。同様に、ヒトの母子間においても、母親が歩いている時は、座っている時に比べて赤ちゃんの泣く量が約10分の1に、自発的な動きが約5分の1に、心拍数が歩き始めて約3秒程度で顕著に低下することを見いだし、赤ちゃんがリラックスすることを科学的に証明しました。


理研BSIのサイトはこちらから


Miho Nagasawa, Kazutaka Mogi, Takefumi Kikusui, Continued Distress among Abandoned Dogs in Fukushima. Scientific Reports. 2012, 2, Article number: 724 doi:10.1038/srep00724


2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震後の深刻な原子力事故により、避難生活が長期化し、福島(日本)では多くのペットが遺棄を余儀無くされる事態に陥っている。我々は、福島県の保護施設から、放浪犬あるいは飼い主が手放した犬を引き取った。再社会化のトレーニングと健康管理を行う過程で、それぞれの犬の行動特性と尿中コルチゾール値を調べ、この地震の直接の影響を受けていない他の地域で遺棄された犬と比較した。福島の犬は、日本の別の地域で遺棄された犬と比べて、見知らぬ人への攻撃性、訓練性および飼育者に対する愛着行動が有意に低下していた。また、福島の犬の尿中コルチゾール値は5~10倍高かった。これらの結果は、福島の犬が非常に多くのストレスを経験していたことを示唆している。



Takefumi Kikusui, Aki Shimozawa, Aya Kitagawa, Miho Nagasawa, Shintaro Yagi, Kunio Shiota, Kazutaka Mogi. Sialic acid N-acetylmannosamine improves object recognition and hippocampal cell proliferation in middle aged mice. Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 2012 Dec 23;76(12):2249-54. 


加齢に伴う認知記憶学習能力の低下は、多くの動物に認められる老化現象である。特に人間社会においては、認知症などの社会問題があり、その改善手法の確率は最重要課題の一つである。Nアセチルマンノサミン(ManNAc)は細胞接着などに重要な多糖類であるが、神経細胞の増殖効果なども報告されている。そこで今回、老齢マウスにManNAcを投与し、空間記憶課題の改善効果を調べた。ManNAcを飲水投与されたマウスでは、場所認知課題の改善効果が顕著に観察された。並行して、海馬神経細胞の増殖の指標であるBrdUの発現、ならびにKi67の発現細胞数が増加した。これらのことから、ManNAcは新規な認知障害改善効果を示す薬物の開発の手がかりとなることが示された。


Mogi, Kazutaka; Shimokawa, Yuko; Nagasawa, Miho; Kikusui, Takefumi, Effects of sex and rearing environment on imipramine response in mice. Psychopharmacology, 224, Issue 1 (2012), Page 201-208


本研究室では、早期離乳マウスの永続的な不安行動とストレス亢進状態を見出してきた。このような状態はうつ症状の前段階と相同性が高い。そこで本実験では早期離乳マウスに三環系抗うつ薬のイミプラミンを投与し、その効果を調べた。通常状態で飼育された動物にイミプラミンを投与した場合、メスではその効果が現れ、不安傾向が軽減されたがオスでは認められなかった。興味深いことに、早期離乳マウスではオスでイミプラミン投与の改善効果が認められたものの、メスではその効果が消失した。海馬歯状回における神経新生細胞数を測定したところ、行動実験の結果と相関し、通常状態で飼育されたメスでは神経新生細胞数が増加したが、オスでは認められなかった。また早期離乳マウスではオスで神経新生細胞数の増加が認められたものの、メスでは観察されず、行動実験の結果と一致した。これらのことから、1)イミプラミンなどの三環系抗うつ薬の効果には性差ならびに幼少期母子間の関係性が影響すること、2)薬剤の行動改善効果は海馬歯状回の神経新生細胞数に並行して観察されること、が明らかとなった。


Miho Nagasawa, Shota Okabe, Kazutaka Mogi, Takefumi Kikusui, Oxytocin and mutual communication in mother-infant bonding. Frontiers in Human Neuroscience  2012; 6: 31.


哺乳類は進化の過程で厳しい環境に適応し、現在の繁栄を享受している。その過程において生き残りをかけた競争の原理が働いていてきたことは想像に難くないが、哺乳類は同時に、群れのメンバーが弱者を守り、仲間の存在によってストレスが軽減するような、親和的な神経・行動システムも発達させてきた。このような親和的システムが機能するには、まず群れのメンバーなど親和的行動の対象となる相手を認識すること、認識するためのシグナルを共有すること、さらに認識後に適切な行動をとることが必要とされる。このような諸段階において、神経ペプチドであるオキシトシンが関与していることは多くの研究から示唆されている。そこで、本総説では、絆形成におけるオキシトシンの基本的な役割を紹介したうえで、親和的関係の最たるものであり、かつ哺乳類に普遍的であると考えられる母子間の絆に焦点をあて、齧歯類を中心としたモデル動物における絆形成のメカニズムについて概説する。


Shota Okabe, Miho Nagasawa, Kazutaka Mogi, Takefumi Kikusui. The importance of mother-infant communication for social bond formation in mammals. Anim Sci J. 2012 Jun;83(6):446-52


生物学的絆は哺乳類で普遍的にみられる関係性であり, 動物は生物学的絆を形成した特定の他個体と共にいることでストレスに対する耐性が高まることが知られている. 我々はこれまで母子間における生物学的絆が幼若動物を過剰なストレスから守り, 正常な情動・社会行動の発達に不可欠であることを明らかにしてきた. この関係性は子の誕生直後からみられるものではなく, 母による養育行動と子の愛着行動の連鎖によって形成されてゆくと考えられている. 本稿では, 嗅覚・聴覚・触覚に作用する社会的シグナルの絆形成における役割, またその受容・認知の神経メカニズムを, ヒツジやブタなどの家畜や実験動物での研究から検討する. 母子双方から発せられる匂いや声は個体認知・記憶に関わるのみでなく, たとえば母の嗅覚受容が阻害されると養育行動が円滑に発現しないことなどから, 絆形成に向けた行動も促進すると考えられる. さらに, マウスでは子からの超音波発声と匂いを複合的に受容することで母による子の認知と養育行動がより強固になるといった感覚統合の存在も示唆されている. これらのことは, 母子間における生物学的絆形成における社会的コミュニケーションの重要性を示している. また, 社会的シグナルの認知や養育行動発現はオキシトシン神経系の活性化を伴うが, オキシトシンは子の愛着行動発現への関与も示唆されており, 生物学的な絆形成における中心的役割を担うと考えられる.


Nagasawa M, Yatsuzuka I, Mogi K, Kikusui T A new behavioral test for detecting decline of age-related cognitive ability in dogs, Journal of Veterinary Behavior: Clinical Applications and Research, Volume 7, Issue 4 , Pages 220-224, July 2012.


加齢に伴う認知記憶学習能力の低下は、多くの動物に認められる老化現象である。特に人間社会においては、認知症などの社会問題があり、その改善手法の確率は最重要課題の一つである。これまでヒトの臨床研究やマウスラットなどの実験動物を用いた研究が主体となってきたが、イヌやネコなどの大型哺乳類においてもこれらの研究が、動物の管理や獣医医療の観点のみならず、ヒト社会へのトランスレーショナルリサーチからの観点も含めて、重要となってきた。本研究では、さまざまな年齢のイヌを用い、場所の3選択課題を開発して場所認知における老齢性障害の検出を試みた。ほぼすべてのイヌが課題を達成したものの、誤試行の数は年齢依存的に上昇することが示された。このことから、今回開発した場所3選択課題はイヌの老齢性認知障害を評価する有用な行動実験系であることが示された。


Ito K, Arko M, Kawaguchi T, Kikusui T, Kuwahara M, Tsubone H. Intracerebroventricular administration of taurine impairs learning and memory in rats. Nutr Neurosci. 2012 Mar;15(2):70-7.


人間社会においては、認知症などの社会問題があり、その改善手法の確率は最重要課題の一つである。今回、アミノ酸の一つであるタウリンを脳室内に直接投与し、その改善効果を調べた。タウリン処置により、モーリス型水迷路の空間学習課題における場所記憶は改善するよりもむしろ障害された。