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paper 2008-2009

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Yonezawa T, Koori M, Kikusui T, Mori Y. Appeasing Pheromone Inhibits Cortisol Augmentation and Agonistic Behaviors During Social Stress in Adult Miniature Pigs. Zool Sci. 2009, 26, 739-744


(簡約) ブタの安寧フェロモンによるグルココルチコイドと攻撃行動の抑制


母動物の存在は幼獣を落ち着かせ、不安行動を軽減させることが知られている。このような母動物による社会緩衝作用において、ブタなどの匂いに対して感受性の高い動物では、匂い成分そのものによる安寧効果が知られてきた。すでにヨーロッパでは、授乳中の母ブタの乳房付近から分泌される脂肪酸群を調整し、Pig Appeasing Pheromone (PAP) として販売されるほどである。今回、このPAPを用い、成熟後のブタにおいても、仔ブタ同様の社会的緩衝作用があるかどうかを調べた。フェロモンを暴露されたブタでは見知らぬ個体との社会的遭遇時におけるグルココルチコイドの分泌量が低下し、その後の身体的接触時における攻撃行動の発現の潜時が延長した。これらのことからPAPは成熟後のブタにおいても、ストレスや不安行動を軽減させる効果をもつことが明らかとなった。


Kikusui T, Mori Y. Behavioural and neurochemical consequences of early weaning in rodents J Neuroendocrinol. 2009 Mar;21(4):427-31.

 

マウス早期離乳の影響と神経系の影響に関する総説です。

 

茂木 一孝, 永澤 美保, 菊水 健史 「イヌの社会性解明へ向けた発達行動学的アプローチ」動物心理学研究 59, 25-36, 2009

 

(簡約)イヌの社会性の発達に関する総説


ヒ トとイヌの特別などこから来るのだろうか?近年、イヌのヒトとのやり取りにおける特殊な能力に関しては多くの研究が報告されるようになってきた。一方、幼 少期にヒトとのかかわりを持たずに育ったイヌはヒトに対して攻撃的になり、恐怖反応を形成するようになる。このことから、イヌの母子間を含む幼少期環境と イヌの行動と神経系の発達の関係の重要性が指摘されよう。本論文では、イヌの発達に関する生物学的な知見をまとめ、イヌの社会性、特にヒトとのかかわりに ついて、考察を深めてみたい。

 

NagasawaM., Ohta M. The influence of dog ownership in childhood on the sociality of elderly Japanese men Anim Sci J, 2009, 81, 377 - 383

(簡約)イヌとの共生における有益性の個人差に関する研究

近年、我が国では、犬の飼育が飼い主の心身の健康に与える効果が注目されているが、その因果関係はいまだに明らかにされていない。本研究では、過去の犬の飼育経験に焦点をあて、それらが高齢男性(平均年齢73.4歳)の現在の心身の健康と関連があるかどうかについてアンケートにより調べた(郵送、有効回答数220/320人)。質問項目は現在及び過去の犬の飼育経験に関する項目と犬への愛着度、現在の健康状態、生きがい度および孤独感、自分が受けている社会的サポートの程度に関する心理尺度、近隣の住民及び友人との交際状況などであった。アンケートで得られた過去の飼育経験に関わる回答を用いて、犬の飼育経験者をクラスター解析によって3群に分け、それらに犬の飼育未経験群を加えた4群で心身の健康に関する回答を従属変数としてANOVA及び重回帰分析を行った。その結果、初めて犬を飼育した時期が若齢であり且つ今までの犬の飼育頭数が多い群において、他者との交際が活発であり、社会的サポートを受けていると感じる度合が高いことが明らかになった。これらの結果から、幼少期における犬の飼育経験が高齢男性の他者との交際状況等の社会性向上に関連していることが示唆された。

 

Nagasawa M., Mogi K., Kikusui T. Attachment between humans and dogs. Jpn Psychol Res, 2009 51(I3), 


(簡約) ヒトとイヌ間におけるアタッチメントに関する総説

イヌ-ヒト間の特異的な関係は、社会学のみならず心理学及びヒト医療的見地からも研究対象とされてきた。近年、認知科学の分野において、イヌは進化の過程でヒトに対する優れた社会的認知能力を獲得したと考えられ、ヒトと類似した社会的シグナルを用いて、ヒトと情緒的な絆を形成したことが示唆されている。

本稿は、ヒト-イヌ間のアタッチメントの生物学的観点について述べている。アタッチメントの要件は種特異的な社会的シグナルや特異的反応によって、特定の対象を弁別することであり、それらは行動のみならず神経内分泌学的な恒常性維持機能によってもたらされている。犬は飼い主等の特定の対象を弁別して特異的な自律反応を示し、さらにイヌから飼い主へ向けた注視は、飼い主の尿中オキシトシン濃度を上昇させることが示されている。このような異種間アタッチメントを生物学的側面からの理解によって、異種間における共感性の要素と同時に、遺伝的系統樹によらない認知能力の進化の発達の可能性が示される。

 

Sekiyama K, Ushiro Y, Adachi C, Kikusui T, Tanemura, K, Hasegawa Y. Abnormalities in Aggression and Anxiety in Transgenic Mice Overexpressing Activin E.  Biochemical and Biophysical Research Communications. 2009 Jul 31;385(3):319-23.

 

Okura, Y., Tawara、 S., Kikusui, T., Takenaka, S. Dietary vitamin E deficiency increases anxiety-related behavior in rats under stress of social isolation. BioFactors 2009 May-Jun;35(3):273-8.

 

Inagaki, H., Nakamura, K., Kiyokawa, Y., Kikusui, T., Takeuchi, Y., Mori, Y. The volatility of an alarm pheromone in male rats. Physiol. Behav. 2009, 96, 749-752

 

Okura Y., Tawara S., Kawai E., Kikusui T., and Takenaka A. Dietary vitamin E deficiency increases anxiety-related behavior in rats. J. Clin. Biochem. Nutr., 2008, 43(S1), 445-448.

 

Nagasawa, M. Kikusui, T., Onaka, T., Ohta, M.  Dog's gaze at its owner increases owner's urinary oxytocin during social interaction.  Horm. Behav. 55. 434-441 (2009)

 

(簡約)ヒトとイヌの絆形成のメカニズム解明

ヒトと犬との交流においてイヌからの注視が飼い主の尿中オキシトシンを上昇させる


ヒト-イヌのような異種間での社会的絆の形成との関連についての生物学的根拠はこれまで、ほとんど明らかにされてこなかった。オキシトシンは動物の社会的な絆の形成において非常に重要な役割を担っているホルモンであり、ヒトでは信頼感やストレス軽減作用などが知られている。本研究では、イヌからヒトへの愛着行動を示していると考えられる"イヌからの注視"に着目し、イヌとの交流後にヒトの尿中オキシトシン濃度が上昇するかどうかを調べた。イヌとの自由な交流の前後における飼い主の尿中オキシトシンを比較したところ、"イヌからの注視"から始まる飼い主-イヌ間のやりとりの回数が多い飼い主では、尿中オキシトシンの増加が認められた。このことから、イヌからの注視が、ヒトの絆ホルモンとしてのオキシトシンを上昇させ、ヒトとイヌの絆形成に役立っている可能性が示された。

 

Kikusui, T., Ichikawa, S., Mori, Y., Maternal deprivation by early weaning decreases hippocampal BDNF and neurogenesis in mice.  Psychoneuronedocrinology 2009, 34, 762-772

 

(簡約)マウス早期離乳によるコルチコステロン上昇とそれに伴う海馬神経栄養因子と神経新生の低下

早期離乳は海馬機能を低下させる。

こ れまでの研究によって、母親から通常より1週間ほど早期に離乳することで、体成長には影響を与えることなく、情動や行動の発達に特異的な変容をもたらしう ること、すなわち早期離乳された仔の成長後の不安行動と攻撃性の上昇、ストレス内分泌系の亢進、扁桃体におけるミエリン形成の早期化が確認された。今回の 実験では、早期離乳後のコルチコステロンの変動を追跡し、成長過程における海馬の神経栄養因子発現と神経新生がどのように影響を受けるかを調べた。生後 14日目の離乳後では、母親と一緒にいる個体と比べて48時間以上もの高いコルチコステロン値を示した。一方、生後21日目の離乳では離乳後1時間以内に 基礎値にまで回復した。早期離乳された雄マウスでは生後21日目の海馬における神経栄養因子蛋白発現量が低下した。神経新生はBrdU標識法を用い、生後 2週、3週、5週で投与し、それぞれ生後3週、5週、8週で陽性細胞数を評価した。早期離乳された雄マウスでは生後3週、5週、8週齢のいずれにおいても 細胞新生数が低下し、雌では5週齢のみで低下が認められた。神経細胞マーカーのNeuNあるいはTuj1で共染色をおこなったところ、雄の生後5週齢にお いて早期離乳による神経新生の低下が観察された。これらの結果から幼少期母子関係の剥奪は発達期におけるコルチコステロン分泌の上昇を惹起し、神経栄養因 子の発現と神経新生の低下を引き起こすことが明らかとなった。またその影響には雌雄差があり、雄動物がより脆弱であった。

 

Yamamoto, M. Kikusui, T., Ohta, M.  Influence of delayed timing of owners' actions on the behaviors of their dogs, Canis familiaris.  J Vet Behav: Clinical Applications and Research 4, 11-18. (2009)

 

(簡約)イヌの視覚聴覚認知の感受性:遅延による効果

イヌは社会刺激の遅延に非常に敏感だった。

 

近 年の研究により、イヌの視覚的認知能力の高さがあきらかにされつつある。今回、飼い主からのコマンドを与える場合、イヌの行動に対して、飼い主からのコマ ンドの表出を機械的に遅延させた場合の、イヌの行動を観察した。飼い主とイヌは別室に存在し、視覚情報と聴覚情報のみでやりとりができるように設定した。 またその際に、飼い主の音声と画像を遅延させる機器を接続し、人為的に変化させるようにした。ライブ画像と音声を呈示して、飼い主とやり取りをさせた場 合、9割程度の割合で飼い主のコマンドに正確に反応したが、2秒の遅延をいれるとすべてのイヌで正答率が低下し、また反応時間の遅延が認められた。遅延時 間を1秒、0.5秒、0.25秒、0.175秒と短縮していくと、0.25秒までは反応の遅延と正解率の低下が認められた。これらのことから、イヌは視覚 聴覚情報の受容に関するタイミングが大事であること、またその感受性はほぼヒトと同じであることが明らかとなった。

 

Ono, M., Kikusui T., Mori, Y. Ichikawa, M. Murofushi, K. Early weaning induces anxiety and precocious myelination in the anterior part of the basolateral amygdala of male Balb/c mice.  Neuroscience 28, 156, 1103-1110 (2008)

 

(簡約)マウス早期離乳による脳内扁桃体のミエリン形成の早期化

早期離乳をすると、扁桃体外側基底核におけるミエリン形成が早期化されることが明らかとなった。

こ れまでの研究によって、母親から通常より1週間ほど早期に離乳することで、体成長には影響を与えることなく、情動や行動の発達に特異的な変容をもたらしう ること、すなわち早期離乳された仔の成長後の不安行動と攻撃性の上昇、ストレス内分泌系の亢進が確認された。今回、脳内の発達に関与が深いとされるミエリ ンに着目し、早期離乳によってミエリン形成がどのような影響を与えるかを調べた。前頭葉、海馬、扁桃体におけるミエリン特異的な脂質であるガラクトシルセ ラミド(Gal)の発現は、オスマウスの扁桃体においてのみ変化が認められ、5週令における発現が早期離乳群で高くなることがあきらかとなった。またこの 変化は3週令や8週令ではみとめられず、一過性にミエリン形成が早まることが示唆された。扁桃体内における電子顕微鏡観察により、扁桃体外側基底核におけ るミエリン形成が変化を受けることがあきらかとなり、5週齢時には、早期離乳によってミエリン鞘に囲まれた有髄神経線維の数が増加した。しかしその直径は 萎縮しており、ミエリン形成の異常な様子が認められた。これらのことから、早期離乳は扁桃体外側基底核を中心とする繊維連絡を介した情動回路のネットワー ク形成が変化すると思われた。

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